国連環境計画(UNEP)は、アフリカの水資源が抱える課題を克明に示す報告書『アフリカ水アトラス』を発表した。この報告書は、過去と現在を対比した写真や詳細な地図、衛星画像を多用し、チャド湖の縮退、ビクトリア湖の水位低下や農業排水等による水質悪化、ナイルデルタの土壌浸食、石油漏出によるニジェール川流域の水質悪化等、アフリカの水状況の悪化を浮き彫りにしている。これによると、アフリカの水不足は、人口増加、社会経済問題、気候変動等が複合して生じたもので、アフリカの一人当たり使用可能水量は、これまでも世界平均を大幅に下回っていたが、さらに低下しつつある。アフリカの人口の40%以上が乾燥地に居住することや、主要な水源地である大陸中部の山岳地帯が森林破壊と浸食により大きな打撃を受けていることも原因の一つだという。他方、明るい兆しもみられ、乾燥地域では雨水貯留技術の拡充による農業生産の拡大、水管理については計画放水、灌漑、地下水利用事業などの成功例も報告されている。