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 東大生研、赤雪の全球シミュレーションに世界初成功

発表日:2022.02.02


  東京大学生産技術研究所は、赤雪の発生予測モデルを高度化し、地球規模で発生時期や分布を再現した。雪氷上(1~5℃程度の低温環境)に適応した光合成微生物の存在が報告されている。そうした微生物のうち、真核生物の藻類に区分される種は「雪氷藻類」と呼ばれており、雪氷上の強光によるDNAの損傷を防ぐために、細胞内にアスタキサンチンなどの「赤い色素」を貯め込む。雪氷藻類の大繁殖は「赤雪」現象を引き起こす。赤雪は世界中の氷河や雪原上で確認されており、太陽光の吸収を助長することで、積雪の融解を加速する。同研究所は、融雪期間に応じて微生物が増殖する過程を再現したモデル(Onuma, Y et al., 2018)に、光合成が可能な日中のみに藻類の繫殖を限定する過程、さらに降雪被覆による繫殖抑制過程を導入し、現地での観測値による比較検証を経て、従来の数値モデル「Snow algae model」を全球で適用可能なモデルへと更新した。今回、新規モデルと既存の陸面過程モデル(Tatebe et al., 2019)を組み合わせ、赤雪の全球シミュレーションを実行したところ、赤雪は6月ごろから北半球の中緯度で発生し始め、8月になるとグリーンランドでも発生し、北半球では季節の進行とともに赤雪の分布が北上しているという新知見が得られた。一方、南半球では季節が春から夏に進むとともに赤雪の分布が南米やニュージーランドから南極へと南下することが分かった。これらの予測結果は両半球の報告事例と一致しており、Snow algae model等を用いた手法の信頼性が裏付けられた。赤雪の発生は「降雪イベントの時期と融雪期間に依存している」と結論している。地球温暖化による発生時期の早期化や発生地域の拡大可能性なども示唆されたという。

情報源 東京大学生産技術研究所 プレスリリース
千葉大学 プレスリリース
機関 東京大学生産技術研究所 千葉大学
分野 地球環境
キーワード 地球温暖化 | 氷河 | 陸面過程モデル | 赤雪 | 雪氷藻類 | アスタキサンチン | Snow algae model | 全球シミュレーション | 降雪イベント | 融雪期間
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