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 新知見&地域貢献!海底に眠るマイクロプラスチックの75年史 愛媛大など

発表日:2022.10.11


  愛媛大学、松山大学、静岡県立大学および産業技術総合研究所からなる研究グループは、海底に堆積したマイクロプラスチック(以下「MP」)の超長期的な推移を明らかにした。海洋生物のMP誤飲・誤食が懸念されており、海洋環境におけるMP量の見積や将来予測が喫緊の課題となっている。近年の調査研究により、海洋に流出したプラスチックごみが微細化する過程や、海底がMPの最終的な受け皿になっていることが知られるようになってきた。しかし、浮遊・漂流しているMPが海底に堆積するまでの過程、すなわち沈降する段階については未解明な点が多く、海洋プラスチックの収支を見積もる上で大きな課題となっていた。他方、MP研究が比較的新しい分野であることから、定量化につながる長期観測データが乏しいという現状もある。こうした課題を克服するために、海底の堆積物からMPの変動を読み解く試みが進められており、MPの蓄積率に対する人間活動や社会変化の影響が理解されつつある。同研究グループは、先行研究を発展させることで、過去のMP蓄積を復元することが可能となり、モデル化に必要なデータ(例:MP蓄積速度)を取得できると考えた。2017~2019年にかけて別府湾の水深70 m地点の海底泥を採取し、MPの抽出と堆積年代の同定を行った結果、過去75年間(1940~2015年)にわたって蓄積したMPの種類や量(個数)が明らかになった。MPが初めて見つかったのは日本が高度成長の最中にあった1958~1961年で、それ以降は20年周期でMP量が増減を繰り返すことが分かった。MP量が増加した期間(1970年頃、1990年頃、2015年頃)は同海域の植物プランクトン量も多かった期間と一致することから、MPの沈降に対する植物プランクトンの関与が示唆された。MP表面におけるバイオフィルムの形成や、有機物を捕捉する仕組みが作用し、MPの沈降を促進されたと推察している。歴史を紐解くとともに、海洋ダイナミクスとの接点を見い出した世界初の成果であるという。別府湾海底堆積物は、「人類の時代(人新世)」の国際標準模式地(GSSP)の有力候補に入っている。本成果は、人新世の始まりを特徴づける地層記録であり、GSSPを定義する上で重要な役割を果たしている、と書き添えている。

情報源 愛媛大学 プレスリリース
機関 愛媛大学 松山大学 静岡県立大学 産業技術総合研究所
分野 ごみ・リサイクル
水・土壌環境
キーワード 海底堆積物 | 植物プランクトン | マイクロプラスチック | バイオフィルム | 別府湾 | 長期観測データ | 海底泥 | 高度成長 | 20年周期 | 人新世
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