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 気候変動による経済的影響、エミュレータで過大評価部分を4%縮減可能に!

発表日:2022.12.16


  国立環境研究所は、気候変動による経済影響評価の不確実性幅を削減する新手法を開発した。気候変動予測の不確実性低減には未だ多くの課題が残されている。より信頼性の高い気候モデル、さらには大気大循環、海洋大循環、陸面水文過程および海氷過程のみならず、それらの相互作用や大気化学や海洋・陸面の生物地球化学過程と気候の相互作用まで表現できる地球システムモデル(Earth system model: ESM)の確立が求められている。しかし、現時点のESMで炭素循環を表現し、地球温暖化の予測を行った場合、実際よりも過大な評価結果が出力されてしまう。こうしたことから、気候モデルの将来予測実験と相関の高い現在気候の指標を探り、その指標が観測値から外れたモデルは将来予測の信頼性も低いと評価するEmergent constraint (EC)が注目を集めている。同研究所は、EC研究の加速に資するために、多様なモデルの動作を模倣するエミュレータを開発している(Takakura J., et al., 2021)。本研究では、当該エミュレータを適用することにより、67 の ESM の将来の気候変動予測に基づいて 9 つのセクターにおける経済的影響を推定し、8 つのセクターにおける影響を調査している。中程度のGHG濃度シナリオのもとで、エミュレーションされた21世紀末の経済影響評価の不確実性幅の上限は2.9%から2.5%へと引き下げられ、分散(ばらつきの指標)を31%削減できた。計算機資源の活用にはコスト的な限界がある。アンサンブル計算ではないアプローチとしては、世界初の成果であり、不確実性低減の低コスト化が期待できる。本成果は、気候科学の進歩が影響評価における気候関連の不確実性を減らすことを明示したものであるとともに、気候変動の予測と影響評価の分野をまたいだ総合的な知見を得るために必要な道筋を指し示しているという(掲載誌:Environmental Research Letters、DOI:10.1088/1748-9326/aca68d)。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 国立環境研究所
分野 地球環境
キーワード 気候モデル | 気候変動予測 | 不確実性 | 地球システムモデル | 不確実性低減 | Emergent constraint | 経済的影響アンサンブル計算 | 緊急制約 | Earth system model | エミュレータ
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