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 ザトウクジラの自動照合システム、集団構造の詳細解明に威力を発揮!

発表日:2022.12.09


  (一財)沖縄美ら島財団ほか4団体・2大学は、国内4海域(沖縄、小笠原、奄美、北海道)に来遊するザトウクジラの集団構造を明らかにした。ザトウクジラはホエールウォチングの対象として注目されている。豪快なジャンプ(ブリーチング)をはじめ、海面 に「尾びれ」をあげて潜る行動(フルークアップダイブ)など が観光客の目を惹きつけている。他方、ザトウクジラの「尾びれ」は個体ごとに形状や模様が異なることから、肉眼による識別作業などが行われてきた。同財団は、30年以上にわたる調査を通じて1万枚を超える尾びれ写真を収集してきた。また、識別作業の効率化に向けて、AI技術を用いたザトウクジラの尾びれ自動照合システムを他大学と共同で開発し、個体識別の精度を実証している(Yoshikawa, T. et al., 2022)。西部北太平洋のザトウクジラは、夏にロシアなどの高緯度海域で餌を食べ、冬に沖縄やフィリピンなどの低緯度海域で交尾や出産、子育てを行うことが知られている。今回、認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー、大阪大学ほか3協会・大学と共に、3,532頭分の尾びれ写真を照合し、集団構造解析への応用を試みた。その結果、国内4海域において複数の同一個体が発見され、同海域が共通の集団によって利用されていることが明らかになった。さらに同一個体の頭数に基づき、海域間の交流頻度などを評価したところ、国内4海域の集団内に2つの小グループ(東シナ海側/太平洋側)が存在することが示唆された。クジラのID照合とも言えるこのシステムを軸に、西部北太平洋全体の個体数、集団構造および回遊経路の把握を目指す国際共同研究を推進するという。ザトウクジラの資源管理や保全活動に資する展開が期待できる、と結んでいる。

情報源 (一財)沖縄美ら島財団 プレスリリース
認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー 研究・発表
(一社)小笠原ホエールウォッチング協会 インフォメーション
大阪大学 ResOU
機関 (一財)沖縄美ら島財団 認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー (一社)小笠原ホエールウォッチング協会 奄美クジラ・イルカ協会 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター
分野 自然環境
キーワード 保全活動 | 資源管理 | ザトウクジラ | 回遊経路 | AI技術 | 尾びれ | 自動照合システム | 集団構造 | 交流頻度 | 西部北太平洋
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