東海大学大学院生物学研究科・生物学部の研究グループは、日本列島に広く生息するヒナコウモリ(Vespertilio sinensis)の移動生態をDNA解析により明らかにした。
本研究では、北海道から京都府までの11集団・計273個体を対象に、ミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子の塩基配列を解析し、集団遺伝構造と季節移動の有無を検討した。その結果、北海道と本州の集団間に季節を問わず明瞭な遺伝的分化が認められ、津軽海峡が地理的障壁として機能している可能性が示された。一方、本州内では、夏季に地理的距離と遺伝的距離の相関が見られたが、冬季にはその傾向が消失していた。これは、夏季に出生地へ戻る傾向がある一方、冬季には異なる遺伝集団が混在して越冬していることを示唆している。本研究は、従来の標識調査で示唆されていた移動パターンをDNA解析によって初めて裏付けたものであり、ヒナコウモリが出生地と越冬地の間で季節的な移動を行っていることを示す重要な知見である(掲載誌:Zoological Science)。――なお、ヒナコウモリは環境省レッドリストではランク外(2007年~)であるが、青森県をはじめ、全国各地で地道な保全活動が行われている。
情報源 |
東海大学 News & Events
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機関 | 東海大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 保全活動 | 集団遺伝構造 | DNA解析 | 越冬地 | ミトコンドリアDNA | 季節移動 | ヒナコウモリ | 津軽海峡 | 地理的障壁 | 出生地 |
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