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 早大とJX石油開発、CO2地中貯留のリスクマネジメント研究を本格始動

発表日:2023.07.31


  早稲田大学は、JX石油開発(株)の寄付に基づく「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)プロジェクトの安全性向上を目指した研究」を開始する。研究代表者を務める理工学術院創造理工学部の古井教授は、同大学卒業後、テキサス大学オースティン校で学位(石油工学)を取得し、スーパーメジャーの一角・コノコフィリップスに勤務していた。約8年前から早稲田大学で研究活動を再開し、近年では坑井掘削時の地層破壊に関する新知見を発表している(Furui, K. et al., 2022)。石油・天然ガスの開発や操業に精通している学識経験者であることから、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)や国内石油元売り企業に技術的な助言を期待されることも少なくない。一方、CO2大幅削減の切り札と目されているCCSは実証段階から社会実装のステージに移行している。米国やイギリス、EU諸国には商用CCS施設が登場しており、本邦でも最近、民間が主導する「先進的CCS事業(全国7地区)」が採択された。JX石油開発(株)など3社は、西日本の製油所や火力発電所に由来するCO2を船舶やパイプラインで輸送し、九州北部沖~西部沖(海域帯水層)に圧入する大規模CO2貯留事業を構想している(貯留量:約300万トン/年)。関係省庁はCO2貯留権や事業者の長期的責任等に関する法規制を検討しており、事業者はより安全なCCSプロジェクトの実現に向けて準備を進めている。プロジェクトの実施に当たっては、開発から数十年先の閉鎖までを見据えたプランニングが必要となる。本寄付研究では “ジオメカニクス(岩盤工学、力学的変動評価とも言う)”を活用した定量的なリスク評価とモニタリング手法の体系化を目指す。ジオメカニクスの理論体系は、最近注目されている化石燃料(タイトオイル、シェールガス)の開発に応用された実績がある。古井研究室は、CO2地中貯留候補地の地下浅部から基盤岩に至る「広域ジオメカニクスモデル」の開発と貯留層への流体圧入によるリスク評価プロセスの構築を担う。JX石油開発(株)は従来の石油・天然ガス開発事業に、脱炭素の取り組みを加えた「二軸経営」を推進している。後者の柱を太くする国内最大規模かつ安全なCCSプロジェクトの成功を期待しつつ、研究資金のみならず、研究用データを積極的に提供する(寄付総額:19,500千円、研究期間:3年)。

情報源 早稲田大学 Topic
JX石油開発(株) ニュースリリース
機関 早稲田大学 JX石油開発(株)
分野 地球環境
環境総合
キーワード CCS | リスク評価 | JOGMEC | 脱炭素 | 先進的CCS事業 | ジオメカニクス | Carbon dioxide Capture and Storage | 岩盤工学 | 大規模CO2貯留事業 | 力学的変動評価
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