東北大学大学院環境科学研究科の久保田准教授と前田氏らは、同大学大学院生命科学研究科の南澤特任教授と共に、一酸化二窒素(N2O)を除去する新たなプロセスを開発した。──N2Oは二酸化炭素(CO2)の273倍の地球温暖化係数を持つ強力な温室効果ガスであり、温暖化効果への寄与率は約6%とされている。また、21世紀最大のオゾン層破壊物質としても知られている。──同大学の開発技術は、スポンジ担体を吊るした「Down-flow Hanging Sponge(DHS)リアクター」を用いた微生物反応によるN2O除去プロセスである。DHSリアクターは、スポンジ担体を懸垂し、上部から廃水を流入させることで、スポンジに生息する微生物の働きによって廃水を処理する。試作装置を用いた実験では、無酸素環境で5–300 ppmの濃度域では約3分、2,000 ppmの高濃度の場合でも約18分で94%以上のN2O除去を達成した。この技術は廃水処理プロセスからのN2O排出量を低減でき、持続可能な社会の構築に貢献できるものである。──N2Oの除去に微生物反応を利用しているため、化学物質を使用する必要がなく、環境への負荷が低い。また、DHSリアクターは気相のN2Oがスポンジ担体の液相に自然に溶存するため、電力消費を伴う曝気を行う必要がない。気液平衡により気相の物質が液相に溶け込むため、曝気などが不要で省エネルギーな技術となっている。今後は、N2O濃度が変動する実際の廃水処理プロセスでの実証試験を行い、大気中のN2Oを削減できる技術としての発展させるという。また、本研究で採用したN2O除去微生物については、廃水処理のみならず農業分野への応用なども期待できると述べている。