京都大学大学院理学研究科の中西氏、同大学生態学研究センターの佐藤准教授らの研究グループは、河川と湖を行き来するサケ科魚類(降湖型マス)の生活史を定量的に評価した。──サケ科魚類は河川で生まれた後、海に降りて成長し、再び河川に戻って産卵すると理解されている。しかし、「湖」という新規環境に適応し、河川と湖で一生をおくるアマゴ・サツキマスの個体・集団も存在する。──研究グループは、降湖型マスの実態を明らかにするため、冷水帯がある3つの湖と冷水帯がない1つの湖で、大規模なサンプリングを行い、鱗の輪紋解析や耳石のストロンチウム同位体分析を用いて回遊履歴を推定した。その結果、冷水帯のある湖では回遊年数が1~3年におよび、成熟した後、秋に河川へ遡上する個体が多く見られた。一方、冷水帯のない湖では回遊年数が半年にとどまり、夏までに未成熟のまま河川へ遡上する個体が多かった。また、降湖型マスは、一般的に理解されている降海型マスよりも、成熟体サイズの大型化、繁殖年齢の多様化が顕著であることが分かった。これら新知見は、夏の回避場所となる冷水帯の有無が、回遊パターンや生き方の多様化に大きく影響することを示している。──本成果は、降湖型マスの資源保全・持続的利用に重要な示唆を与えると同時に、新たな生息環境に対して、動物が移住の仕方をシフトし、多様な生き方を創出した事例のひとつという見方もできる。
情報源 |
京都大学 Latest research news
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機関 | 京都大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 大型化 | 保全 | 生態適応 | サケ科魚類 | 新規環境 | 回遊パターン | 冷水帯 | 鱗の輪紋解析 | ストロンチウム同位体分析 | 生物資源の持続的利用 |
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