地球温暖化や水質変化、土砂や栄養塩の流入など、地球環境の変化は複数の要因が同時並行で進行することが多い。こうした複雑な環境変化に対して、生物種がどのように応答するのかを予測することは、生物多様性保全や沿岸域管理における重要な課題となっている。
横浜国立大学大学院環境情報研究院の佐々木雄大教授らの研究グループは、ニュージーランド北島の河口干潟に生息する無脊椎動物を対象に、10~32年にわたる長期モニタリングデータを解析し、生物の体の大きさや寿命、移動性といった「生物形質」から、環境変化に対する種ごとの応答特性を予測できることを明らかにした(掲載誌:Nature Communications)。
本研究では、二枚貝や多毛類、甲殻類などの底生無脊椎動物相の変化とともに、海面水温や南方振動指数といった気候要因、浮遊物質量による淡水影響の指標、干潟堆積物中の泥分や有機物量、クロロフィルa量など、複数の環境要因を統合的に解析した点が特徴である。解析には、あらかじめ数式を仮定しない非線形時系列解析が用いられ、複雑な自然環境下での因果関係の把握が試みられた。
解析の結果、小型で移動性の低い種ほど、海面水温の上昇に対して一貫して負の影響を受けやすい傾向が示された。これは、短期観測や実験室レベルの研究では必ずしも明確に捉えられてこなかった特徴であり、長期かつ実環境データを用いた解析によって初めて明瞭に示されたものである。さらに本研究では、種の環境応答が時間とともに変化する点にも着目した。解析の結果、寿命の短い種ほど、環境変化への感受性が時間的に大きく変動する傾向が確認された。これは、短命種が環境変動に対して比較的速く反応する一方で、その応答が安定的ではない可能性を示唆しており、将来予測を行う際の重要な要素となる。河口干潟は、陸域と海域をつなぐ生態系として、水質浄化や物質循環、生物の生息場所の提供など多様な生態系機能を担っている。その一方で、気候変動に加え、人為的な土砂流入や富栄養化の影響を受けやすい環境でもある。
研究グループは、生物形質と長期モニタリングデータを組み合わせる本研究の枠組みが、今後、他の沿岸域や海洋生態系、さらには陸上生態系にも適用可能かを検証していく必要があるとしている。本研究は、単に「どの種が減少するか」を示すのではなく、環境応答の時間的変動という側面を含めて種の脆弱性を捉えようとする点に特徴がある。
| 情報源 |
横浜国立大学 プレスリリース
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|---|---|
| 機関 | 横浜国立大学 |
| 分野 |
自然環境 |
| キーワード | 生物多様性 | 海面水温 | 無脊椎動物 | 環境応答 | 長期モニタリング | 生物形質 | 非線形時系列解析 | 地球環境変化 | 河口干潟 |
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