文部科学省は、令和6年度委託調査「スーパーコンピュータの整備や利用推進に係る委託調査事業(受託者:アドバンスソフト株式会社)」を公表した。この報告書は、世界各国のスーパーコンピュータセンターの運用実態と技術動向を網羅的に分析したものである。調査対象は欧米中豪などの主要国で、特にGPU(Graphics Processing Unit)の導入状況に焦点を当てた点が注目に値する。調査手法は文献調査、Webアンケート、インタビュー等となっており、各国のスパコンセンターの組織構造、予算、システム構成、研究分野、エネルギー効率などの詳細がわかるようになっている。欧州ではLUMI(フィンランド)、MareNostrum(スペイン)、JUPITER(ドイツ)などが、米国ではFrontier(ORNL)、El Capitan(LLNL)などが代表例として挙げられる。──資料編・用語解説的な章を除く、1~6章の概要は以下のとおりである。
【GPU導入の潮流:H100とMI300Aの台頭】TOP500(2024年11月版)におけるGPU搭載率は62%に達し、特に上位100システムではNVIDIA H100が30システム以上に採用されている。H100はHopperアーキテクチャを採用し、AIとHPCの両立を可能にする性能を持つ。一方、AMDのMI250XおよびMI300Aも急速に存在感を増しており、MI300AはCPUとGPUを統合した設計で、低レイテンシかつ高効率なデータ処理を実現している。IntelのData Center GPU Maxシリーズは採用例が少なく、NVIDIAとAMDの二強体制が明確化している。中国は独自開発のMatrix-2000を一部導入しているが、非公開システムが多く、国際的な比較は困難である。
【センター別の戦略:脱NVIDIAと量子融合】欧州のBSC(スペイン)はNVIDIA依存からの脱却を目指し、独自アクセラレータの開発を進めている。ドイツのHLRSは廃熱を大学の暖房に再利用するなど、エネルギー効率を重視。シンガポールのNSCCは生成AIの需要増に対応し、冷却効率の高いシステムを導入している。
【結論:GPUはHPCの中核技術へ】GPUはもはや補助的な加速装置ではなく、HPCの中核を担う存在となった。TOP500の分析からは、GPU搭載システムが性能・効率の両面で優位に立ち、今後のスパコン設計において不可欠な要素であることが明らかである。特にNVIDIA H100とAMD MI300Aの競争は、次世代HPCの方向性を決定づける鍵となるだろう。──なお、環境科学・環境研究に積極的に利用されているスーパーコンピュータセンターとして、アメリカのHECC(High-End Computing Capability)-NASA Ames Researchや、NERSC(National Energy Research Scientific Computing Center)–LBNL(米国)、シンガポールのNSCC(National Supercomputing Centre)などが報告されている。
情報源 |
文部科学省 報道発表
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機関 | 文部科学省 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | エネルギー効率 | GPU搭載率 | NVIDIA H100 | AMD MI300A | TOP500 | エクサスケール | 量子コンピューティング | AI統合 | スパコン冷却技術 | HPC市場動向 |
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