信州大学は、スズキ、日本特殊陶業、日本繊維製品品質技術センター(QTEC)と連携し、超音波を用いたマイクロプラスチックの高効率濃縮回収装置の開発に成功した。本研究は、NEDO官民による若手研究者発掘支援事業の一環として実施された。
マイクロプラスチックは、5 mm以下の微小なプラスチック片であり、特に洗濯排水に含まれる繊維状の「マイクロプラスチックファイバー」は、従来のフィルターでは十分に除去できず、環境中への流出が問題視されている。信州大学の研究グループは、圧電素子による超音波振動を利用し、流路内に音響定在波を形成することで、粒子を流路中央に集める「音響収束」技術を応用した。
開発された装置は、10本のステンレス円管を並列化し、3段直列の濃縮モジュールを組み合わせることで、100 mL/minの高流量処理と1000倍以上の高濃縮を実現。化学薬品を一切使用せず、90%以上の回収率を達成した。さらに、異なるサイズや形状のプラスチック粒子やファイバーに対しても高い回収性能を示し、実際の洗濯排水サンプルでも有効性が確認された。
本装置は、A4用紙の半分以下のサイズで、連続運転が可能、メンテナンスも低減されており、家庭やクリーニング工場、下水処理施設などでの導入が想定される。今後は、さらなる並列化や自動化を進め、繊維由来マイクロプラスチックの回収技術として社会実装を目指すとしている。