岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)と(株)機能性食品開発研究所の共同研究グループは、植物発酵エキスが人工胃液・人工腸液中でマイクロプラスチック(microplastics; MP)に結合し、消化管からの体外排除を促進し得る可能性があることを報告した(掲載誌:Current Nutrition and Food Science)。
MPが海洋・河川・大気を介して生態系に拡散し、ヒトの血液・脳・肝臓・腎臓などで検出されたという報告がある。血栓形成促進、呼吸器疾患、免疫系障害、慢性炎症などの健康影響が懸念されており、とりわけ直径150 μm未満の粒子は腸管上皮を通過し得るため、摂取後に腸から速やかに排泄させる方策の探索が急務であった。
本研究では、「植物発酵エキス」に含まれる有機酸・アミノ酸・ペプチド・ポリフェノール等が示す帯電性と、MPとのイオン相互作用に着目している。直径106~125 μmの粒子100 mgを人工胃液(酸性)・人工腸液(中性)中で植物発酵エキスと37℃・1時間振とうし、非浮遊化した粒子量(結合量)を定量した結果、人工胃液では植物発酵エキス10 gで73 mg、5 gで74 mg、2.5 gで63 mg、1 gで31 mgの結合量となり、人工腸液ではそれぞれ45 mg、55 mg、43 mg、16 mgであった。一方、比較対照試験(セルロースや難消化性デキストリン)ではこうした結合はほとんど認められず、酸性条件下では高まることが示唆された。
研究グループは、酸性条件下で荷電が強化されることにより結合が高まると考察し、今後は結合物質の同定を通じて効率的なサプリメント開発への応用を視野に入れている。また、杉本准教授は「発酵食品による免疫力向上効果は、腸内で増えた善玉菌が生産する短鎖脂肪酸が免疫グロブリンの働きを助け、免疫の過剰反応を制御するTreg細胞を増やすなど、その機能が徐々に明らかになっている。本研究成果により、植物発酵エキスに含まれるマイクロプラスチックを体内から排除する物質が解明される手がかりになる」と期待している。
| 情報源 |
岡山大学 プレスリリース
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|---|---|
| 機関 | 岡山大学 (株)機能性食品開発研究所 |
| 分野 |
ごみ・リサイクル |
| キーワード | マイクロプラスチック | 酸性条件 | ionic interaction(イオン相互作用) | fermented plant extract(植物発酵エキス) | short-chain fatty acids(短鎖脂肪酸) | 腸管上皮 | 消化管排泄 | 結合量(mg) | food science(食品科学) | in vitro試験 |
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