東京大学生産技術研究所の菊本英紀准教授らの研究チームは、東京地域における過去30年間の気候変化を高解像度で再現する解析手法を開発した。気象観測データと数値気候解析データを融合することで、都市部の気温・湿度の変化を5kmの空間解像度、1時間ごとの時間解像度で再現可能とした。
都市部では地球温暖化の影響に加え、人口集中や都市開発による不浸透面の拡大が、局地的な高温化を加速させている。従来の気候データでは、都市環境の複雑な要素を反映した詳細な解析が困難であったが、本研究では、観測所の30年分の気温・水蒸気圧データと地域規模の気候解析を数理的・確率的手法で統合することで、精度と解析期間の限界を克服した。
解析の結果、東京中心部では夏季の夜間気温が約2℃上昇しており、特に2011年以降、極端高温日の頻度が顕著に増加していることが判明した。東京都市部では1990年代と比較して、2021年以降の極端高温日が2倍以上に増加しており、熊谷市など周辺地域ではさらに多くの高温日が観測されている。これらの地域差は、都市計画や暑さ対策の重点地域を特定する上で重要な知見となる。
本成果は、国際学術誌『Sustainable Cities and Society』に掲載されており、都市の気候変動を科学的に把握するための基盤として位置づけられている。今回の手法は都市計画者が暑さ対策を設計する上で有効なツールとなると考えられている。昼夜の気温差や極端高温日の発生傾向を地図として可視化することが可能となったが、研究チームは、今後の課題として「観測地点ごとの精度のばらつきや都市構造の詳細な反映」を挙げている。
情報源 |
生研 ニュース
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機関 | 東京大学生産技術研究所(生研) |
分野 |
健康・化学物質 |
キーワード | 気候変動 | 都市計画 | 空間解像度 | 熱中症対策 | 都市気温 | 数値気候解析 | 時間解像度 | 不浸透面 | 高温リスク | 環境データ融合 |
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