名古屋大学大学院環境学研究科の研究グループは、森林土壌から放出される温室効果気体「一酸化二窒素(N₂O)」の生成メカニズムを、酸素の三同位体組成を用いて解明した(掲載誌:Biogeosciences)。
N₂OはCO₂やCH₄に次ぐ温室効果気体であり、1分子あたりの温室効果はCO₂の約300倍とされる。農地や森林などの土壌が主な放出源であるが、特に降雨時に放出量が増加する理由はこれまで明らかになっていなかった。――研究グループは、酸素原子に含まれる三種の安定同位体(¹⁶O, ¹⁷O, ¹⁸O)の相対比、すなわち三酸素同位体組成に着目。この組成は、酸素(O₂)由来か亜硝酸(NO₂⁻)由来かを判別する指標となる。土壌中で進行する硝化反応と脱窒反応では、酸素の由来が異なるため、放出されるN₂Oの三酸素同位体組成を比較することで、生成経路を特定できる。実際の森林土壌において、降雨時に放出されるN₂Oと土壌中のNO₂⁻の三酸素同位体組成を観測した結果、降雨時には主に脱窒反応によってN₂Oが生成されていることが判明した。一方、晴天時には硝化反応が主要な生成過程であることも明らかになった。
この成果は、土壌からの温室効果気体放出を抑制するための基礎知見となる。また、三酸素同位体組成を用いた本手法は、従来の窒素同位体比による手法と異なり、反応進行度に依存せず、明確な判別が可能である。さらに、人工的な同位体濃縮や反応阻害剤の投入を必要とせず、自然環境下での簡便かつ経済的な解析への応用展開が期待される。
情報源 |
名古屋大学 研究成果発信サイト
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機関 | 名古屋大学 |
分野 |
水・土壌環境 |
キーワード | 一酸化二窒素 | 同位体分析 | 温室効果気体 | 脱窒反応 | 気候変動対策 | 硝化反応 | 三酸素同位体組成 | 土壌起源 | 自然環境観測 | 科研費支援研究 |
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