(国研)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、「農業分野における気候変動緩和技術の開発(農林水産省戦略的プロジェクト研究推進事業)」の成果と開発技術の展開方向などを紹介した。農研機構は、家畜排せつ物に由来する温室効果ガス(GHG)削減に向けた技術開発の一環として、2015年に養豚の汚水浄化処理施設で発生するGHG排出削減に効果のある「炭素繊維リアクター」を開発した。炭素繊維リアクターは、炭素繊維担体に微生物を付着させて汚水(豚の尿など)を浄化する技術で、曝気槽に投入すると生物膜を形成し、表層では好気的な硝化反応が、深層では嫌気的な脱窒反応が進み、汚水浄化から排出される温室効果ガスの99%以上を占める一酸化二窒素の放出が回避できる。今回、岡山県内の農家施設で実証運転したところ、GHGを約80%削減できることが確認された。肥育豚6,000頭規模の汚水浄化処理施設に300万円程度で導入でき、全国に導入できれば、年間60万トンのGHG排出削減が実現すると見積もられている。早期普及に向けて実証事例を増やしつつ、リアクターの改良などを進めていくという。