東京大学大学院農学生命科学研究科は、環境中には窒素ガスを大気に放出する脱窒微生物が、従来考えられていたよりも多く存在していることを解明したと発表した。脱窒は、自然生態系や農耕地からの窒素の損失や排水処理系からの窒素除去をもたらす反応で、多くの微生物によって担われている。そのため脱窒微生物の分布や生理・生態は農業や産業の分野でも多くの注目を集めている。今回、研究グループでは、既に明らかになっている遺伝子の塩基配列情報を収集・利用して、亜硝酸還元酵素遺伝子を広く検出するための方法を開発。この手法を用いて畑土壌、水田土壌、森林土壌、湖堆積物に含まれる亜硝酸還元酵素遺伝子を解析した結果、すべての環境で、これまで検出されてきたより多様かつ2-6倍も亜硝酸還元酵素遺伝子(脱窒微生物)が存在していることを明らかにした。また、新たに検出された脱窒微生物の多くは、農耕地土壌において強力な温室効果ガスである一酸化二窒素(N2O)を生成することを示した。今後、環境中でのN2Oの生成や脱窒のより精確な推定が可能になることが期待されるという。