環境省は、人工光合成技術の早期社会実装に向けた道筋を体系的に示す「人工光合成の社会実装ロードマップ」を公表した。
「人工光合成」とは、太陽光・水・CO₂を用いて燃料や化学品を生成する技術。現在、光触媒・光電極・電解系など複数の技術的なアプローチによる実現が模索されている。日本はこの分野で世界トップクラスの技術力を有しているが、社会実装に向けてはコスト、制度設計、社会受容性など多くの課題が残されている。
同省は『人工光合成』をCO2を資源として活用するCCU(Carbon Capture and Utilization)技術の一環として位置づけている。2050年ネット・ゼロの実現に向け、再生可能エネルギーの主力化や省エネ技術に加え、排出ゼロが困難な素材産業などにおける「人工光合成」の導入促進を意識しており、同省は2026年から2040年にかけて、電解系・光触媒系の要素技術ごとに性能向上、大型化、コスト低減を段階的に進める計画を示している。特にCO₂電解技術については、2030年の社会実装を目指し、2035年には水素との組み合わせによる最終製品の製造、2040年には共電解による製品化を実現する方針である。光触媒系についても、2035年に水素製造の社会実装、2040年には最終製品製造の実現を目指す。
同ロードマップでは、制度・インフラ整備として国際標準化、人材育成、CO₂削減効果の算定方法の標準化なども盛り込まれている。また、産官学の連携体制を構築し、進捗確認とロードマップの適宜見直しを行うことが明記されている。人工光合成の社会実装は、脱炭素のみならず、エネルギー安全保障や産業競争力の強化にも資するとされている。都市・地域・家庭レベルでの導入イメージを提示しつつ、国民理解と受容性の向上を図りながら、同省はロードマップに基づく取組を着実に進める方針である。