千葉大学、昭和医科大学、兵庫県立人と自然の博物館の共同研究チームは、日本全土でよく見られるノキシノブ類の未記載種を兵庫県で発見し、和名「タジマノキシノブ」(学名:Lepisorus tajimaensis T.Fujiw.)と命名した(掲載誌:Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)。また、本種は、遺伝解析と形態比較により、日本固有の新種であり、種間交雑によって生じたことが明らかになった。
ウラボシ科ノキシノブ属は東アジアから東南アジアに広く分布する着生シダで、世界に約90種が知られるが、形態的特徴に乏しく、分類が困難な倍数性複合体である。既往研究では、ノキシノブと他種の交雑による複数の種が確認されていたが、今回の調査で未知種が発見された。研究チームは、染色体観察とフローサイトメトリーによる倍数性解析を行い、本種が2n=152の6倍体であることを確認。葉緑体および核遺伝子の系統解析により、ウロコノキシノブとクロノキシノブの交雑起源であることを示した。形態比較では、根茎鱗片や葉の形態、胞子嚢群の位置などで既知種と区別された。
今後は、交雑の時期や場所を解明し、日本列島における植物分布の変遷や多様性形成過程の理解を深めることが期待される。 綿野教授は「日本の高い生物多様性を把握するため、継続的な調査が不可欠だ」と述べており、タジマノキシノブの分布調査と自生地保護を進める方針だ。