北海道大学、国立極地研究所および海洋研究開発機構からなる研究グループは、太平洋側北極海における海氷融解時期の違いが、秋季のマイクロプランクトン群集構造に影響を及ぼすことを明らかにした(掲載誌:Polar Science)。
マイクロプランクトンとは、20~200 µmの植物プランクトンと小型動物プランクトンの総称であり、海洋生態系の基盤を担う低次栄養段階の生物である。近年、太平洋側北極海では急速な海氷減少が進行しており、特に陸棚域と海盆域で基礎生産量や群集構成に違いが生じている。――従来の研究は短期的・局所的な観測に限られていたが、本研究では海洋地球研究船「みらい」による2019年・2020年の秋季航海において、広範囲かつ詳細な種組成調査を実施した。
本調査では、海水を表層および亜表層クロロフィルa極大層から採取し、倒立顕微鏡による同定・計数を行った。海氷融解日は、国立極地研究所のArctic Data archive Systemを用いて定義され、群集構造との関連性を統計解析(クラスター解析・Max-t検定)により評価した。
その結果、マイクロプランクトン群集は6つに分類され、海域ごとに異なる分布を示した。チュクチ海北部では、海氷融解が早かった2019年に群集Bが優占し、珪藻類Proboscia alataの細胞密度が高かった。これは、早期融解による日射量増加と水温上昇が、有機窒素化合物の利用を促進したためと考えられる。一方、2020年には融解が遅れたことで低水温・低栄養塩環境となり、群集Cが形成された。氷縁域では、海氷融解日の差が10日間程度であったが、群集構成には大きな変化は見られなかった。――本研究は、海氷変動が植物プランクトン群集に与える影響を種レベルで解明した数少ない報告であり、今後の北極海生態系の変動予測モデルの精度向上に資する知見と位置づけられる。
情報源 |
北海道大学 プレスリリース(研究発表)
国立極地研究所 研究成果 JAMSTEC プレスリリース |
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機関 | 北海道大学 国立極地研究所 海洋研究開発機構(JAMSTEC) |
分野 |
地球環境 自然環境 水・土壌環境 |
キーワード | 食物網 | 海氷融解 | 珪藻類 | 海洋地球研究船みらい | 群集構造 | 太平洋側北極海 | マイクロプランクトン | 基礎生産量 | Arctic Data archive System | Polar Science |
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