東京大学、千葉工業大学、高知大学の研究者グループは、インド洋の深海堆積物コアから、約5,600~5,200万年前(前期始新世)の「超温暖化」イベントの終息メカニズムを解明した。今回研究グループは、試料の炭素同位体比を詳細に分析し、インド洋からは初となる、「超温暖化」イベントを示す複数の同位体比異常を確認した。これにより、前期始新世の「超温暖化」イベントが全球的な環境変動であったという裏付けを得ることに成功した。さらに、試料の化学組成データを統計的に解析し、生物由来の炭酸カルシウム(石灰質プランクトンの殻)、リン酸カルシウム(魚類などの歯や骨片)、バライト(有機物の分解に伴い生じる硫酸バリウムで、過去の生物生産性の指標となる)など4つの成分の変化や影響を分離・抽出した。これらの結果から、前期始新世の複数の温暖化イベントにおいて、海洋表層の生物生産が増大して大気−海洋系から余剰なCO2を除去する「地球システムの負のフィードバック」と呼ばれるメカニズムが機能し、温暖化を終息させていたことが明らかとなったという。