国際深海科学掘削計画(IODP)第325次研究航海「グレートバリアリーフの環境変化(2010年2月~4月)」に参加した邦人研究者グループは、最終氷期最盛期(LGM)前後の海水面と気候の変化に関する新たな知見を発表した。IODPは2013年10月にスタートした多国間科学研究協力プロジェクト。同研究航海では、地球温暖化研究において特異な時代とされるLGM前後の環境変化を調べるために、極冠の氷床の拡大や縮小に伴う地形変化等の影響が少なく、海水準を高い精度で見積もることができる熱帯域に位置するグレートバリアリーフ海域で地質試料の採取と化学分析が行われた。従来、氷床はゆっくり成長し、比較的速く小さくなるという概念が主流であったが、今回の研究において過去3万年間の海面の上昇および低下を復元したところ、LGM以降の氷床の変化は想定よりも速かったことが明らかとなった。環境変動の将来予測モデルに氷床の急激な成長や流出などの要素を採り入れる必要があることが示唆されたという。