森林総合研究所とカンボジア森林局は、薪材利用などのために伐採されているフタバガキ科樹木「Dipterocarpus obtusifolius」の再生能力を評価し、現行の利用・管理手法の問題点を明らかにした。両者は、持続可能な森林利用のためのガイドライン提供に当たり、森林再生に関する基本的な情報が不可欠であることから、2002年からカンボジアにおける森林の動態調査を続けている。今回、調査地のうちD. obtusifoliusが優勢な砂地林において、伐採後の萌芽再生能力を詳細調査したところ、萌芽の有無は切り株の大きさと明瞭な関係があり、薪材利用の小径木伐採でも萌芽の発生は約半数に留まった。萌芽の発生を期待する手法(萌芽更新)のみでは森林再生に不十分であり、また親木が伐採されたことから近い将来の種子の発芽による更新(実生更新)も難しいことが明らかになった。これらの知見は論文化されており、カンボジア初の査読付き科学ジャーナルに掲載されている。薪材利用を主体とする伐採は砂地林の持続可能性を脅かす最大の脅威であり萌芽更新と実生更新の特徴を踏まえた新たな管理指針の作成等を提唱している。