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 熱中症リスク検知に有効!臨床発汗学から生まれたウェアラブルセンサ

発表日:2023.01.27


  信州大学医学部メディカル・ヘルスイノベーション講座・大橋特任教授らの研究グループは、新たに開発したウェアラブル発汗センサを用いて、科学的な根拠に基づく「熱中症アラート」を検知する仕組みを提案した。大橋特任教授は、長年にわたって血液系・リンパ循環の基礎研究と臨床研究に取り組み、成果の応用や専門書・一般書の執筆(例:健康科学、医用工学、医用機器開発分野)に注力している。1981年から汗の研究を本格化し、精神的な刺激に伴う発汗現象の理解深化を図りつつ、小型軽量かつ安価な発汗計の基盤となる技術(通称:換気カプセル法)を発明した。換気カプセル法は、カプセルを測定したい部位の皮膚に被せ、そこに空気を送り、皮膚を通過する前後の湿度変化から発汗を計測する仕組み。1988年に同大学発ベンチャーの第一号案件となる(株) SKINOSを創設し、換気カプセル法を用いて、手掌部の発汗量を測定できる高感度発汗計・SKN-2000Mを具現化した(共同開発機関:長野工業高等専門学校)。SKN-2000Mは2003 年に厚生労働省から医療機器の認可を受けており、2017年にSKN-2000Mを用いた検査への保険適用が認められている。大橋特任教授と(株) SKINOSは汎用性の追求にも余念なく、医療機関・研究機関向けの据付型発汗計、各種センサ・計測機器、データ記録装置・解析ソフトのラインナップを拡げ続けている。本成果は、より一般的な利用シーンを想定し、大量発汗に伴う生理メカニズム(発汗→枯渇感→脳下垂体後葉における抗利尿ホルモン・バゾプレシンの分泌→血液の濃縮回避)に関する知見をベースに開発されたもの。先ず、従来の換気カプセル型発汗計をさらに小型化・ウェアラブル化することで、運動中や日常生活の中で「局所発汗量」を無拘束計測できるようにした(プロダクト名:SKW-1000、本体寸法:55×46×17H mm)。次に、SKW-1000が連続的に測定している発汗曲線から「熱中症危険の告知時点(2次微分の値が負に変化した時点)」を定義し、ヒトの臨床実験を行った。その結果、被験者が枯渇感を覚えるタイミング(スマートフォンで通知)と発汗曲線から推定した「告知時点」は相関性が高く、熱中症リスクの発生ポイントとして採用できることが明らかになった。なお、本研究における局所発汗量は皮膚の単位面積・時間あたりの発汗量を表している( 単位:mg/(cm2・min))。今回定義した告知時点は発汗スピードが遅くなった時点に相当するものであり、血液が濃縮し、汗の材料になる水分が不足し始めた時点ととらえることができる。既に熱中症対策の所管省庁とも調整を始めており、学童や高齢者への早期導入・利用が期待される。

情報源 信州大学医学部 トピックス
機関 信州大学医学部
分野 健康・化学物質
キーワード 熱中症対策 | 大学発ベンチャー | 熱中症アラート | ウェアラブル発汗センサ | 換気カプセル法 | SKINOS | 長野工業高等専門学校 | 局所発汗量 | 無拘束計測 | バゾプレシン
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