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 実現なるか“究極のビニル系プラスチック循環システム”開発

発表日:2023.04.10


  信州大学(以下「信大」)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者3名は、画期的なビニルポリマーの開発研究に着手した。本研究は、(公財)国際科学技術財団の顕彰事業「Japan Prize(日本国際賞)」にご厚情を賜った上皇上皇后両陛下(天皇皇后両陛下)への謝意を表し、2006年に創設された「平成記念研究助成」の対象となっている(2023年採択案件)。プラスチックごみ問題が顕在化して久しく、国内プラスチック総生産量の 7 割以上を占めるビニルポリマー(四大汎用樹脂:ポリエチレン、プロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン)のリサイクルが喫緊の課題となっている。再利用、再生利用に加え、原料・モノマー化技術の進展が期待されているが、ビニルポリマーは炭素原子で構成される主骨格の分解が難しく、PET(ポリエチレンテレフタラート)の様なケミカルリサイクルのフローが確立されていなかった。今回の取り組みは、三人寄れば文殊の知恵(コンセプト)に立脚している。信大の高坂准教授は、2019 年にケミカルリサイクルが容易なビニルポリマー(原料:アセチルサリチル酸)を世界で初めて開発し、酸やアルカリを用いて短時間で分解できることを確認している。同じく信大の長田准教授は、高温高圧水を利用して天然多糖類を分解し、機能化成品を得る研究を進めている。一方、JAMSTECの出口海洋機能利用部門・生命理工学センター長は、深海の極限環境や深海生物に固有の生存戦略に発想を得た「深海インスパイヤード化学」に関する研究の一環として、深海の熱水噴出孔周辺の物質循環を再現した水の急速加熱・急速冷却装置を開発している。2016年より3者は共同研究を進めており、新規ビニルポリマーに既往成果を適用することで、“水だけで分解し、資源再生するビニルポリマー”の実現に挑戦する。先ずはプロセスの開拓と最適化などに取り組み、汎用的なビニルモノマーとの共重合体に応用展開することで、理想的なプラスチック資源循環社会の実現に資する、と抱負を述べている。

情報源 信州大学繊維学部 プレスリリース
海洋研究開発機構 プレスリリース
機関 信州大学繊維学部 海洋研究開発機構
分野 ごみ・リサイクル
キーワード ケミカルリサイクル | プラスチック資源循環 | プラスチックごみ問題 | 機能化成品 | 深海インスパイヤード化学 | ビニルポリマー | 平成記念研究助成 | 四大汎用樹脂 | モノマー化 | 高温高圧水
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