広島大学大学院統合生命科学研究科の栂(とが)研究員と坊農(ぼうの)教授、フマキラー(株)の木本研究員・藤井研究員らは、感受性系統および抵抗性系統のトコジラミ(Cimex lectularius)のゲノム配列を決定した。トコジラミは1960年代以降、殺虫剤の開発により大規模な蔓延は見られなくなったが、近年再び被害が増加している。その原因の一つが殺虫剤への抵抗性の獲得である。具体的には、日本における抵抗性系統と感受性系統の全ゲノム解読を行い、抵抗性系統に特異的な変異を持つ729の転写産物を特定した。これにより、DNA修復などの生理機能に関与する遺伝子や、飢餓に応答して糖の取り込みを促進する遺伝子に多くの変異が見られた。フマキラー株式会社が保有するトコジラミを用いた実験では、抵抗性系統は感受性系統の約2万倍の抵抗性を示すことが明らかになった。ゲノム解読の結果、感受性系統は644Mb、抵抗性系統は614Mbのゲノムサイズが得られ、N50の値は1.5Mbと2.1Mbであり、リファレンスゲノムの0.55Mbを大きく上回った。両系統とも約13,000の遺伝子が存在し、599の遺伝子が抵抗性系統特有の変異を持つことが確認された。---今後、ゲノム編集などの遺伝子機能解析を通じて、これらの変異と殺虫剤抵抗性の発達との関係を明らかにすることが期待される。また、今回明らかになった変異を基に、野外に生息する個体における殺虫剤抵抗性の予測にも活用できると考えられる。
情報源 |
広島大学 ニュース&トピックス(研究成果)
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機関 | 広島大学 フマキラー(株) |
分野 |
健康・化学物質 自然環境 |
キーワード | 生理機能 | ゲノム編集 | トコジラミ | ゲノム解読 | 抵抗性遺伝子 | 殺虫剤抵抗性 | DNA修復 | 飢餓応答 | 糖取り込み | 転写産物 |
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