北海道大学の研究グループは、潮間帯生態系の生物群集に対する気候変動の影響を長期的に評価した。「潮間帯生態系」には独特の生物群集が形成されている。しかし、潮間帯は潮の満ち引きに応じて現れ、そこに生息する生物は環境の変動に対して敏感な種が多いことから、調査そのものが難しく、未解明な部分が多い。──本研究は、北海道東部太平洋沿岸における長期的なモニタリング調査の成果を取りまとめたものである。同地域の厚岸(あっけし)沿岸にある4つの海岸、計20の岩礁で、海藻類・固着動物、藻食性巻貝、肉食性巻貝の存在量を毎年測定した(調査期間:2003~2023年)。その結果、海藻類が約3倍に増加し、藻食性巻貝類が約5分の1に減少していることが確認された。また、生物群集データと気候データを照合し、詳細な解析を行ったところ、温暖化や海洋酸性化が各種の存在量のトレンドに与える影響が明らかとなり、暖かい海域を好む種は増加し、冷たい海域を好む種や石灰質の殻を持つ種は減少することが判明した。──潮間帯生態系における難易度の高い生物調査に長期間、果敢に取り組んだことで生み出された成果であり、酸性化の影響が温暖化よりも大きいという事例を示すことで、気候変動対策の方針に新視点をもたらすものとなっている。