東京農工大学とクイーンズランド大学の国際共同研究チームは、過去約40年間にわたる日本の大型陸生哺乳類(イノシシ、ツキノワグマ、ニホンカモシカ、ニホンザル、ニホンジカ、ヒグマ)の分布域変化を総合的に分析した。──本研究において、これら6種の分布域がいずれも拡大していることがあらためて確認された。また、耕作放棄地が増加した地域ほど、大型哺乳類が新たに分布を広げる傾向があること、降雪量の減少が大きい地域では、分布域が広範囲に拡大する傾向が見られた。かつて、大型哺乳類の分布域の中心は山岳地帯であったが、現在では人間が居住する平地やその周辺にも分布域が拡大している。研究チームは、「耕作放棄地の増加」と「降雪量の減少」が、それらを促進してきたと考察している。──この研究成果は、温暖化が進行する中で、日本の有害鳥獣対策が一層難しくなることを示唆している。研究者は、地方の人口減少が加速し、地球規模での温暖化が継続することで、今後もこれら大型哺乳類の分布域拡大は止まらない可能性があると指摘している。大型哺乳類の分布域拡大は、農作物被害はもとより、自動車との衝突事故や、ヒグマ・ツキノワグマによる人身事故の急増につながり、ニホンジカの生息密度増加に伴う植生構造の改変や土壌流出など、自然生態系への負の影響も懸念される。有害鳥獣対策(計画的防除)の強化と継続的な実施についても言及している(掲載誌:Communications Earth & Environment)。