国立極地研究所と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、北極域研究強化プロジェクト(ArCS III)の一環として、水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)に搭載された高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の観測データを活用し、北極海と南極海の海氷域面積の変動を解析した結果を公表した。
両機関は、衛星観測データをもとに海氷分布の時系列変化を可視化し、研究船「みらい」による現場観測と併せて公開している。海氷は地球の冷源として太陽エネルギーを反射する役割を持つが、減少すると海水面の熱吸収が進み、融解が加速する。この現象は「アイス・アルベド・フィードバック」と呼ばれており、気候システムに重大な影響を及ぼし、臨界点(ティッピングポイント)を超えると不可逆的な変化を招く可能性がある。近年、北極海の海氷減少は長期的な傾向として続いており、海洋生態系や気候変動の理解に不可欠な観測対象となっている。
今回の解析では、北極海の海氷域面積が2025年9月7日に年間最小値458万平方キロメートルを記録し、衛星観測開始以来13番目に小さい値となった。一方、南極海では9月15日に年間最大値1787万平方キロメートルを記録したが、過去47年間で3番目に小さい水準であった。北極では冬季最大面積も過去最小を更新しており、長期的には年間約8.4万平方キロメートル(北海道の面積に相当)のペースで減少している。海域別では、東シベリア海で海氷が残存する一方、グリーンランド東側やバレンツ海では縮小が顕著であった。
プロジェクトに係わる研究者らは、こうした変動が自然変動と地球温暖化の複合要因による可能性を指摘し、今後も「しずく」と後継機「いぶきGW」(GOSAT-GW)による二機体制での観測を強化する方針を示している。
| 情報源 |
国立極地研究所 研究成果
JAXA地球観測研究センター Earth-graphy |
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| 機関 | 国立極地研究所 宇宙航空研究開発機構(JAXA) |
| 分野 |
地球環境 |
| キーワード | 気候変動 | 南極海 | AMSR2 | 海氷域面積 | 衛星観測 | GCOM-W | 北極域研究 | ティッピングポイント | アルベド効果 | ArCS III |
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