(独)海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、活性酸素の一つであり、温室効果ガスや大気汚染物質の大気中での寿命に大きな影響力を持つ「水酸基ラジカル」の南北半球における大気中濃度の比率について、独自に開発した化学輸送モデルと高精度かつ広域な最新の地表観測ネットワーク、航空機観測から得られたデータを用いて総合的に評価した。これまで化学輸送モデルを用いた研究成果などから、化学物質の排出量が多い北半球の方が南半球よりも水酸基ラジカル濃度が高いと考えられてきたが、今回の研究の結果、南北半球の平均濃度はほぼ同じであることが明らかとなった。これは、大気中の温室効果ガスや化学汚染物質等の推定量などを見直す可能性を示唆するもの。また、水酸基ラジカルは、メタンなどの温室効果ガスや、オゾンや窒素酸化物などの大気汚染を引き起こす主要な化学物質の濃度変動に大きな影響を与えるため、その大気中濃度等を正確に把握することは、これら化学物質の大気中濃度を将来予測する際や排出量分布を推定する際に、その精緻化に貢献することが期待されるという。