物質・材料研究機構(NIMS)は、人工嗅覚技術の実用化に向け、化学センサの識別過程を説明可能なAI(XAI)で解析し、ニオイ分子ごとに最適な感応材料の選定指針を提示することに成功した(掲載誌:米国化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」)。
嗅覚は、食の安全、環境モニタリング、医療診断、快適な生活空間の創出など、暮らしに欠かせない役割を担っている。人工嗅覚は、複数の化学センサでニオイ分子を検出し、AIがそれを分類・識別する技術であるが、従来は感応材料の反応特性が十分に解明されておらず、識別精度に限界があった。――本研究では、嗅覚センサ「MSS」を用いて、94種類のニオイ分子を14種類の感応材料で測定し、そのセンサ応答データをXAIで解析した。XAIは、AIが識別に用いたデータの特徴を可視化する手法であり、解析の結果、ニオイ分子と感応材料の組み合わせによって、識別に寄与するセンサ応答の部位が異なることが判明した。たとえば、芳香族分子の識別には芳香環を有する感応材料が重要であることが示された。この成果により、識別対象のニオイ分子に応じて、必要な感応材料を効率的に選定できるようになり、識別が困難なニオイ分子に対応する材料開発の指針も得られた。また、AIが識別根拠を示すことで、人間の嗅覚の仕組み理解にも貢献する可能性がある。
情報源 |
NIMS プレスリリース
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機関 | 物質・材料研究機構(NIMS) |
分野 |
健康・化学物質 環境総合 |
キーワード | 人工嗅覚 | 化学センサ | 感応材料 | ニオイ分子 | 説明可能AI | 嗅覚センサ | センサ応答解析 | 材料選定指針 | 材料開発 |
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