国立成育医療研究センターエコチル調査研究部の研究グループは、JECS(Japan Environment and Children’s Study)グループと共同で、全国約10万人の親子を対象とした出生コホート調査「エコチル調査」の詳細データを用い、幼児期の粒子状物質(PM)ばく露と甲状腺ホルモン値との関連を検討した(掲載誌:The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism)。
PMばく露が子癇前症や早産、自閉症スペクトラム障害などの発症と関連する可能性が報告されていることがある。成人を対象とした先行研究では、PMばく露と甲状腺ホルモン(TH)値との関連も示唆されていた。――本研究は、PM10-2.5(粒径10μm未満かつ2.5μm以上)に着目し、エコチル調査・詳細調査に協力した約5,000人のうち、2歳児群3,599人と4歳児群3,431人を対象に、家庭訪問による室内外のPM測定値と血中の遊離サイロキシン(fT4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度との関連を、一般化線形モデルを用いて解析した。その結果、1.5歳時のPMばく露はいずれも2歳時のfT4およびTSH値と有意な関連を示さなかった。一方、3歳時のPM10-2.5ばく露は、4歳時のfT4濃度と有意に負の関連を示し、屋内のPM10-2.5が2倍になるとfT4濃度が0.007ng/dL減少する傾向が見られた。――ただし、この関連性は極めて弱く、公衆衛生や臨床の観点から重大な健康影響を及ぼす可能性は低いと結論付けられた。
今後は、他の汚染物質成分や学童期・思春期における大気汚染と甲状腺機能との関連について、さらなる研究が求められる。――エコチル調査は、環境省主導のもと、国立環境研究所を中心に、国立成育医療研究センターや全国15のユニットセンターが連携して実施されている。本研究は、子どもの健康と環境要因の関係を明らかにする同調査の一環として行われた。