東京農業大学生命科学部バイオサイエンス学科の太治輝昭教授らの研究グループは、植物のDNA修復と転写制御の両機能を持つタンパク質「UVH6」が、水不足や高温といった環境ストレスに対する耐性を制御する新たなメカニズムを発見した(掲載誌:Frontiers in Plant Science)。本成果は、乾燥や猛暑に強い作物の育種に向けた新たな分子ターゲットの提示につながるものである。
UVH6は、DNA損傷を修復する「ヌクレオチド除去修復(NER)」機能と、遺伝子発現を制御する「転写制御」機能を併せ持つタンパク質である。研究グループは、水欠乏に弱いシロイヌナズナ変異体(aod12)を解析し、UVH6の変異が耐性低下の原因であることを突き止めた。さらに、UVH6の耐性制御機能はDNA修復とは独立しており、転写制御によって植物の免疫応答の暴走を抑える役割があることが示された。
これまでUVH6は主にDNA修復因子として知られていたが、本研究により、植物が環境ストレスに適応するための「指令塔」としても機能していることが明らかになった。特に、免疫応答の過剰活性化が植物自身の生存を損なうことを防ぐ仕組みとして、UVH6が重要な役割を果たしている。これは、ストレス耐性の分子基盤を理解する上で大きな進展である。
研究グループは、UVH6による耐性制御機構が、地球温暖化や異常気象に対応した作物開発に資すると考えている。本研究は、JSPS科研費(基盤Aおよび学術変革領域A)の支援を受けて実施された。
情報源 |
東京農業大学 ニュースリリース
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機関 | 東京農業大学 |
分野 |
地球環境 自然環境 |
キーワード | 植物ストレス耐性|UVH6|転写制御|DNA修復|乾燥耐性|高温耐性|免疫応答|遺伝子育種|環境ストレス|地球温暖化 |
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