東シベリアの北極海沿岸にある大陸棚の地下の永久凍土に穴があき、大量のメタンが大気中に流出していることが、アラスカ・フェアバンクス大学の研究者らによって明らかになった。研究成果は2010年3月5日付のサイエンス誌に公表されている。これまで永久凍土は、不透過性の壁となってメタンを閉じ込めていたと長い間考えられてきた。現在、この地域から流出しているメタンの量は年間770万トンに上り、他の海域全体から排出される量とほぼ同じだという。研究者によると、大気中のメタン濃度は、地質学的な時間スケールでは、寒冷期で0.3~0.4ppm、温暖期で0.6~0.7ppmくらいで変動してきたが、現在の北極では1.85ppmに達し、過去40万年で最高のレベルだという。大気中に流出しているメタンの量は、この大陸棚のハイドレート層に蓄えられていると推計される量の僅か1%だが、大気へのメタンの負荷は3~4倍になる見込み。ただし、気候への影響は予測が難しいという。