愛媛大学大学院農学研究科の髙田昌嗣准教授と東京農工大学大学院農学研究院の梶田真也教授らの研究グループは、遺伝子組換え技術を用いて、樹木細胞壁の構成成分であるリグニンに発光性構造を導入することに成功した(掲載誌:Plant Biotechnology Journal)。
本研究では、ポプラに特定酵素「F6'H1(Feruloyl-CoA 6'-hydroxylase)」の遺伝子を高発現させることで、発光性化合物スコポレチンをリグニン分子内に組み込み、発光性・光応答性を持つリグニンを樹木内で生成することに世界で初めて成功した。
スコポレチン導入により、リグニンは紫外域から可視光域への発光波長シフトを示し、非極性溶媒中でも消光しにくい特性を維持した。さらに、ポリマー中でも明瞭な発光が確認され、pH応答性や可逆的な光二量化反応など、環境センシングやスマート材料への応用が期待される光機能を獲得した。特に、365 nmの光照射で二量化し、254 nmで元に戻る可逆反応は、天然高分子として初の報告であり、形状記憶材料や光制御型ゲルなどへの展開可能性を示す。
リグニンは地球上で最も豊富な芳香族高分子でありながら、構造の複雑さと難分解性から熱源利用にとどまっていた。本研究は、リグニンの光学特性に着目し、分子設計による機能性材料化を実現した点で、未利用バイオマスの高付加価値化に貢献する。従来の分解性・加工性向上を目的とした改変とは異なり、リグニンそのものを光機能材料として活用する新たな視点を提示した。
研究グループは、今後スコポレチン以外のクマリン誘導体の導入による機能制御や、蛍光センサー・波長変換材料・光応答性ポリマーへの応用展開を視野に入れている。本研究は、科学研究費補助金およびJSTの創発的研究支援・COI-NEXT事業の助成を受けて実施された。
情報源 |
愛媛大学 プレスリリース
東京農工大学 プレスリリース |
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機関 | 愛媛大学 東京農工大学 |
分野 |
ごみ・リサイクル 環境総合 |
キーワード | リグニン | 遺伝子組換え | 機能性材料 | COI-NEXT | 未利用バイオマス | 光応答性 | スコポレチン | 発光特性 | pH応答 | 光二量化反応 |
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